⑴、「淡路史」(通史)を探す

 初回は「淡路史」を探すというテーマです。原始古代から近現代までの淡路島の歴史を通読したいと思ったとき、どんなタイトルの本があるのか、すぐに読みたいと思ったとき誰それが書いた本を、それをどこから入手できるまたは借りるることができるのか、ということを探索したいと思います。

 なお、対象としたのは昭和20年代以降の単行本化された出版物のみです。雑誌・紀要等でも淡路史への試みが発表されていますが、今回は単行本に限りました。

 

 

 淡路国の通史には、新見貫次著『淡路史』(昭和45年・のじぎく文庫)があります。しかし、41年も前の刊行であり、近現代が明治期で終わっているのと、考古学上の発掘成果が著しい原始古代は大きく様変わりしていることなど、不足部分が多いのはやむを得ません。 しかしこの本は、個人執筆の本格的な通史として挑戦された、淡路郷土史研究のパイオニアである新見貫次先生の輝けるお仕事であり、これからも書かれるであろう淡路史の先駆としての記念碑的な本です。


 

 

 昭和52年に大阪淡友会から『淡路の歴史』というタイトルの本が出版されていますが、この本は、淡路の歴史についてそれまでに幾人もの研究者が発表した各分野の論文の合集で、読める通史にはなり得ていません。ただ個々の論文では、今日なお色あせないものがあり貴重な文献集です。

 

 

 この本『国うみの島 淡路の歴史』(淡路文化協会・兵庫県文化協会発行・昭和60年は、全58ページという小冊子で、原始古代から近現代までを5章23節にわけて書いています。各節2ページという少量ですが、郷土史研究の大御所菊川兼男先生の編集で、数人の執筆者で分担して書いていて読み易さがあります。しかしこれとて、原始古代史では先の新見淡路史とおなじ不足箇所が目立つほか、ダイジェスト版ゆえの不満が多々ありますが、これはやむを得ないものでしょう。

 

 もっとも新しいものとしては平成14年に出版された『淡路学読本』があります。これは現在望みうる通史としては最良のものでしょう。この本、磯崎泰博さんが代表幹事の淡路デザイン会議が企画、淡路21世紀協会との両者で発行した本で、淡路の自然、淡路の歴史、淡路の文化・芸術、淡路の社会、淡路の展望の5章にわけ、第2章においた淡路の歴史は歴史編と人物編があり、歴史編は原始古代から昭和戦後以降まで13節に分けて分担執筆により書かれています。各節2ページですがA4判という大判で文章量もあり、写真も適量配置されていて、読み易く編集されています。他の4章も歴史編を掘り下げる補完的役割を果たしており、全93ページの充実した内容となっています。

 

 なお、よく似た書名の『淡路読本』という本があります。先の本『淡路学読本』と混同しやすいので、参考のため『淡路読本』の紹介をしておきたいと思います。

 『淡路読本』は、昭和24年戦後も間もない時期、紙の入手から印刷出版まで今日のように潤沢でなかった時代に出版されました。本を手に取ってみると、画用紙よりも薄っぺらな表紙、中身もザラ紙で、今では経年焼けで薄茶色に変色してしまっていて保存に気を使うほどです。しかし、本の内容は、淡路島が戦後という混乱と再生の大転換期にどのように奮闘しているかを、政治、産業経済、労働などの分野からの生々しい記述で埋めています。また、文化遺産の紹介、災害史などもあり、当時の淡路島の現勢を要覧風に記録した貴重な本です。著者は、当時毎日新聞淡路支局長のかたわら郷土史の研究をされていた岡田貞一さんです。

 

 これまでに紹介した淡路の通史は、歴史書としてはダイジェスト版であり、もっと深く知りたいという勉強家にはもの足りないものがあります。                   この不足を補うものとしていち押しなのが『三原郡史』(昭和54年)の「通史編」です。ここの記述は三原郡の通史ではあるが主な歴史事象には全島的視野にたって書かれており、淡路の通史をより深く知る本としては、現在、この本が最良のものと云えます。         また大部ではありますが『兵庫県史』(通史篇全5巻)(昭和49〜55年)県史・日本史の視点から淡路史を俯瞰することができる貴重な本です。

 

 

この本は、平成12年に洲本市立淡路文化史料館で開催された特別展「海と山と花の国 淡路の歴史と文化」展の図録で、資料写真を主とした冊子ですが、資料の解説として原始古代、古代・中世、近世に分けて、編集者である兵庫県立歴史博物館の専門家らが書いており、最新の文献として是非一読しておきたいものです。

 

 

 

 

 「淡路史」(通史)を探すは、以上で終了です。

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